4億5000万人がプレイする世界的に人気スポーツであるバスケットボール。一般社団法人 Next Big Pivot 代表理事・FIBA財団2023-2027期アドバイザーの梶川三枝がバスケ強豪国の在日大使館を訪問し、各国のバスケ事情について4つの視点から話しを聞くこのシリーズでは、各国で異なる文化的背景や人気度、社会貢献のためのバスケットボールの可能性について詳しいお話を聞いていきます。
このインタビューを通して、GlobasketUnitedは次の4つの視点から、バスケットボールの人気と可能性を学びます。
1st Quarter:各国でのバスケットボール人気について
2nd Quarter:各国でのスポーツ政策について
3rd Quarter:社会貢献のためのバスケットボールの力
4th Quarter:日本のバスケットボールについて
GlobasketUnitedは、在日ドイツ大使館によるインタビュー前半に続き、今回はドイツのスポーツ政策や体制、バスケットボールの人気の高まりや、世界的な舞台での強さをどのように培ってきたかを掘り下げます。またバスケットボールがドイツのコミュニティ強化に果たす役割や、ドイツと日本のバスケットボール・コミュニティの歴史的なつながりについても学びました。
前半を読む
スポーツは、文化の架け橋となり、世界の人々をつなぐ
3rd Quarter:社会貢献のためのバスケットボールの力
ーーー3つ目の質問は、社会貢献のためのバスケットボールの力について、今回のインタビューのメイントピックです。社会変革のためのバスケットボールについて、すでにいくつか良いお話をお聞きしましたが、バスケットボールの社会貢献というテーマについて、何か思っておられることはありますか?また、バスケットボールの力を活用したビジョンについてお聞かせください。ドイツではバスケットボールの人気が高まっており、スポーツを活用して社会貢献活動を推進するよい機会かと思うのですが。
Dr. Grothusen:(社会貢献という意味では)スポーツ全般について(可能性があると)言えるでしょう。もちろん、スポーツは若者にとって最も重要な価値観の一つです。それはオリンピックの価値という言い方もできるでしょう。
Mr. Howoldt:スポーツには、スポーツをする人にとってのメリットも大きく、より良い方向へ自分自身を導く力、あるいはその方法を示す力があります。
ドイツではサッカーだけでなく、バスケットボールでも多くのプロジェクトがあります。ドイツバスケットボール連盟に確認してみたところ、いくつかの団体を挙げてくれました。その一つがBASKETBALL AID1というものです。
もちろん、スポーツの社会貢献についてはロールモデルが必要です。NBAでプレーしていたようなビッグプレーヤーがいれば、人々は彼らの話に耳を傾けるようになります。日本でも同じようなケースがあるのではないでしょうか?
Dr. Grothusen : スポーツに関して言えば、重要なのは良いプレーをするか、チームにマッチするかということだけです。見た目や出身地は関係ないですし、ドイツに住む世界中のさまざまな人々を統合するのにも役に立っています。
ドイツバスケットボール連盟によれば、ドイツのバスケットボール界では社会との関わりが非常に大きいということです。それはドイツのバスケットボールシーンに限ったことではありません。他のスポーツについても、同じような(社会貢献に関する)プロジェクトがあります。
小学校バスケットボール週間:7万人以上の生徒が参加するドイツバスケットボール連盟の小学校バスケットボール週間は、ドイツではわずか3年で非常に成功したプロジェクトに発展した。このキャンペーンの目的は、小学生にバスケットボールというスポーツを紹介し、ポジティブなスポーツ体験をさせると同時に、積極的に参画した小学校にミニバスケットボールを提供することである。すでに2年間で550以上の小学校が参加し、キャンペーンウィーク中に1つ以上のバスケットボール活動を実施した。
4th Quarter:日本のバスケットボールについて
ーーーそれでは、日本のバスケットボールについてご意見をお聞かせください。ドイツのように、将来ワールドカップで優勝したり、オリンピックで決勝トーナメントに進出するにはどうしたらいいでしょうか。どうすればもっと競争力を高めることができるでしょうか。そして、日本でもバスケットボール人気の高まりを効果的に活用し、バスケットボールの力を社会貢献に生かしていくには、どうしたらよいでしょうか。
Mr. Howoldt:何から手をつけていいのか、ただ時計を見るしかないような感じですね。でも、実際にドイツと日本の間には多くの協力関係があります。
ドイツのバスケットボール連盟によれば、日本バスケットボール協会とドイツバスケットボール連盟は友好関係にあるとのことでした。
ドイツバスケットボール連盟は2017年からJBA(日本バスケットボール連盟)と協力しています。DBBのインゴ・ヴァイス会長は、長年にわたって協会の体制づくりに貢献してきました。ALBA BERLINもまた、2019年からドイツと日本の架け橋となっていて、東京横浜独逸学園とパートナーシップを結びました。ドイツ大使館は、都市提携25周年の際には、ミヒャエル・ミュラー(ベルリン)市長の東京訪問にも同行しています。
今夏、パリ五輪の女子3×3バスケットボールでドイツが優勝しましたが、両連盟とも、大きな大会に向けて選手たちを鍛え上げていましたし、以前は一緒にトレーニングキャンプを行ったこともありました。またドイツと同じように、ここ日本でも、ユース(育成)に焦点が当てられていると思いますが、U18の大きな大会がドイツで開催される度に、日本は参加してくれています。
さらにやはり2023年のFIBAワールドカップです。ドイツバスケットボール連盟によると、日本で開催されたワールドカップに参加した選手たちは皆、日本が大好きになったそうです。彼らは本当に日本が好きで、日本のすべてが好きだったというのです。特に印象的だったのは、(日本の)地元の人たちが、ドイツチームを応援してくれたことですね。
ドイツとは違う文化に触れられたということだけでなく、人々はとても気さくで、オープンで、ドイツチームにもとてもフレンドリーに接してくれた。日本はドイツチームにとって本当に良いホスト国でした。
ワールドカップで優勝したヨハネス・ティーマンが今、日本のBリーグでプレーしているのも、それが理由かもし れません。
ーーーW杯でドイツと対戦し、2024年のパリオリンピック大会でもドイツは日本に勝ちました。日本代表のヘッドコーチがオリンピックの試合について「勝てなかったとはいえ、試合の質はワールドカップよりもはるかに上だった」とコメントしていたのを覚えていますが、それは日本代表が世界最強のチームであるあなた方と対戦したからこそ、多くのことを学び、技術を向上させることができたのだと思います。
Mr. Howoldt : ドイツの選手たちも同じことを言っていましたよ。(パリオリンピックでは)日本チームを相手に、ドイツチームは本当に苦戦しましたが、我々はかなりラッキーだったと言えるでしょう。日本と対戦し、その試合に勝てたことを、(ドイツ代表は)喜んでいました。
ーーー素晴らしいお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。
- BASKETBALL AID(バスケットボール・エイド)は、2005年からドイツ全土の小児がん病棟や支援団体を支援する非営利団体。“Your heart beats orange”をモットーに、コーチクリニック、青少年トレーニングキャンプ、抽選会などのチャリティーイベントを通じて資金を集めるとともに、バスケットボールの全国的な普及活動を行っている。この活動は、ブンデスリーガや代表チームの選手、コーチ、その他多くの人の協力により、社会的にインパクトある有意義な活動となっている。 ↩︎