4億5000万人がプレイする世界的に人気スポーツであるバスケットボール。一般社団法人 Next Big Pivot 代表理事・FIBA財団2023-2027期アドバイザーの梶川三枝がバスケ強豪国の在日大使館を訪問し、各国のバスケ事情について4つの視点から話しを聞くこのシリーズでは、各国で異なる文化的背景や人気度、社会貢献のためのバスケットボールの可能性について詳しいお話を聞いていきます。
このインタビューを通して、GlobasketUnitedは次の4つの視点から、バスケットボールの人気と可能性を学びます。
1st Quarter:各国でのバスケットボール人気について
2nd Quarter:各国でのスポーツ政策について
3rd Quarter:社会貢献のためのバスケットボールの力
4th Quarter:日本のバスケットボールについて
アクセシビリティと成長:米国の地域社会が育んだバスケットボール文化
前編に引き続き、バスケットボール発祥の地・米国について掘り下げていきます。
米国はこのスポーツを世界に広めただけでなく、選手と地域社会の双方を育てる強固なシステムを築き上げてきました。バスケットボールは米国文化に深く根付いており、その魅力の鍵は「誰でもプレーできるアクセスのしやすさ」と「コミュニティの関与」にあります。
前編では、在日米国大使館広報・文化担当官補のアダム・ギャラガー氏と、バスケットボールに個人的な思い入れを持つ政治分野の担当官ヌルスルタン・エルドソフ氏が、米国におけるスポーツへのアクセシビリティやマルチスポーツの考え方、女子スポーツに大きな影響を与えたTitle IX(“タイトルナイン”:教育における性差別禁止法)について語りました。
(前半を読む)
第3クォーター:バスケットボールの社会的インパクト
ーーー では第3クォーターでは、「Basketball for Good(社会をより良くするためのバスケットボール)」という視点について、重要な質問をさせてください。
お二人ともバスケットボールには親しみがあり、社会変革のためのバスケットボール、またスポーツ、とりわけバスケットボールによって人生が変わったというようなエピソードもご存じかと思います。ここで特別な質問です。
バスケットボールは米国で生まれたスポーツですが、その米国・NYU(ニューヨーク大学)で始まったのが「World Basketball Day(世界バスケットボールの日)」のムーブメントです。これがやがて国連本部でも採択されました。このことについて、どう感じられますか?
Mr. Gallagher:
大使館の立場からお話ししますね。
私たちは、「World Basketball Day」が米国で始まったことをとても誇りに思っています。バスケットボールは、米国を代表する国民的スポーツであり、それを世界と共有できていることはとても素晴らしく、また有意義なことです。実際、日本でも琉球ゴールデンキングスと協力して、地域交流のイベントを行ったことがあります。
私たちはバスケットボールを含むスポーツを、人と人とのつながりをつくりあげる手段としてよく活用しています。「World Basketball Day」も、そうした人と人との架け橋を築く素晴らしい機会になると思います。
Mr. Eldosov:
私が思い浮かべたのは、もっとローカルな米国国内での例です。私はクリーブランドで育ちましたが、あの地域はとても多様で、世界中からの移民がたくさん暮らしています。兄が高校でバスケットボールをしていた時、地元紙に「国連チーム」として取り上げられたことがありました。
当時のチームには、1990年代のバルカン紛争から逃れてきた難民の子どもたちや、チリから来た生徒たちもいて、とある米国の高校のチームでありながら、まさに“インターナショナル”なチーム。このチームが、地域社会をひとつにしてくれました。米国でも日本でも、移民としてやって来た人たちは、時に社会に馴染むのが難しいこともあります。
でも、バスケットボールのようなスポーツが、その壁を越える「つながり」を生み出してくれる。勝敗を決するスリーポイントシュートを誰が決めたか、それが米国生まれかどうかなんて関係ありません。彼・彼女は“私たちのチームの一員”なんです。
こうしたメッセージは、たとえ見た目や出身地が違っても、「私たちはここで共に生きている」という感覚を与えてくれます。
このような“ローカルな影響力”こそが、私がこのテーマで真っ先に思い浮かべたことです。
ーーー 素晴らしいお話ですね。
第4クォーター:日本のバスケットボールについて
ーーー では、インタビューの最後となる第4クォーターに移りたいと思います。日本のバスケットボールについて、お二人のご意見をお聞かせください。ナショナルチームのこと、草の根のバスケ文化、その他どんな切り口でも結構です。自由にお話しいただけますか?
Mr. Eldosov:
そうですね、私はアルバルク東京や横浜ビー・コルセアーズの試合を観に行ったことがあるのですが、印象的だったのは、家族で来ている人が多かったことです。1人や2人で来るのではなく、もっと大きなグループで来場しているように見えました。
あと、Bリーグのチーム数が想像以上に多くて驚きました。それに、チームに外国人選手は2〜3人までといったルールがあることも知りました。たいていの場合、外国人選手は米国人が選ばれていて、中には元NBA選手もいるんですよね。
その点も興味深かったです。どの試合に行っても、米国人選手がいて応援できるので、米国人の私にとっても親しみを感じられる試合ばかりでした。
それから、オリンピックの話になりますが、日本代表がオリンピック出場を果たしたことは、非常に大きな意味があると思います。というのも、日本代表が出ていないオリンピックに人々が慣れてしまっていた時代が長かったからです。
今回の出場は、日本国内でのバスケットボールの発展と人気の向上につながるのではないでしょうか。これは、1990年代の米国におけるサッカーを思い出させます。ワールドカップや国際大会での活躍が、男女問わずサッカーを始める子どもたちの増加につながりました。
日本でも、同じような流れが起きるかもしれません。もっと多くの日本人選手がNBAでプレーするようになれば、それが新たな“つながり”を生む手段にもなるでしょう。たとえば、(アメリカの)大学が日本人選手をリクルートするきっかけになる可能性もあり、そうなれば、大学にとってもアジア市場にアクセスできるというメリットがありますよね。
ネブラスカ大学における富永選手が良い例で、彼は日本中の関心を集める存在となりました。
ちなみに、外務省(MOFA)は毎年、各国大使館が参加するサッカー大会を主催しているんですよ。ここ2年ほど、アダムと私も米国チームとして参加しました。千葉の日本サッカー協会のトレーニング施設で試合をしました。次は、バスケットボール大会も開催してくれたらいいですね!
Mr. Gallagher:
日本でバスケットボールへの熱意がここまで高まっているのを見るのは、本当にワクワクしますし、とても興味深いです。
私が日本に着任したのは2023年の夏、ちょうどワールドカップが開催されていた時期でした。あるとき、テレビの前を通ったら、日本代表の試合が放送されていて、多くの人たちが夢中で観ていたんです。
その光景から、日本におけるバスケットボールの熱狂をはっきりと感じました。
ーーー バスケットボール人気は確実に高まっていますね。実際、FIBAワールドカップ2023のあと、Bリーグの観客動員数は約40%増加しました。それまでは空席も多かったのですが、今ではチケットを取るのもひと苦労です!今日はお時間をいただき、本当にありがとうございました。
Mr. Gallagher:
このプロジェクトに取り組まれていることを、とても嬉しく思いますし、私たち大使館の活動とも非常に親和性があります。私たちも、音楽、芸術、そして今回のようなスポーツを通じて、人と人をつなぐ取り組みを日々行っています。
複数の大使館の外交官同士が交流できるイベントを実施されていると聞きました。本当に素晴らしいですね!ぜひ今後参加させていただきたいと思います。ありがとうございました!